AWS Lambda ガイド

AWS Lambdaとは?

AWS Lambdaは、サーバーのプロビジョニングや管理なしにコードを実行できる、イベント駆動型のサーバーレスコンピューティングサービスです。 ユーザーはコードをアップロードするだけで、イベント発生時に自動的にコードが実行されます。 利用したコンピューティング時間に対してのみ料金が発生するため、アイドル状態のサーバー費用はかかりません。

サーバーレスコンピューティング:
基盤となるサーバーインフラの管理(パッチ適用、スケーリングなど)をAWSに任せ、開発者はアプリケーションコードに集中できます。これにより、運用負担が大幅に軽減されます。

Lambdaの主要な料金要素

AWS Lambdaの料金は、主に以下の2つの要素に基づいて算出されます。

  • 1. リクエスト数 (Requests):
    関数が呼び出されるたびにカウントされます。成功した呼び出しと失敗した呼び出しの両方が課金の対象となります。
  • 2. コンピューティング時間 (Duration / Compute):
    関数の実行時間と、割り当てられたメモリの量(GB-秒)の積で計算されます。 例えば、512MB(0.5GB)のメモリが割り当てられた関数が2秒実行された場合、1GB-秒となります。

このシンプルな料金体系により、実際に消費したリソースに対してのみ費用が発生し、高いコスト効率を実現します。

無料利用枠の詳細

AWS Lambdaには、開発や小規模なアプリケーション運用に十分な無料利用枠が用意されています(東京リージョン、x86アーキテクチャの場合):

  • 月間100万件のリクエスト
  • 月間40万GB-秒のコンピューティング時間

この無料枠は非常に Generous であり、多くのユーザーが追加費用なしでLambdaを利用開始できます。 当サイトの料金計算ツールも、この無料利用枠を考慮して費用を算出しています。

無料枠の例:
メモリ128MB(0.125GB)の関数が平均1秒実行される場合、月間約320万回のリクエストを無料枠内で処理できます(400,000 GB-秒 / 0.125GB / 1秒 = 3,200,000回)。 実際にはリクエスト数とコンピューティング時間の両方の無料枠を考慮する必要があります。

コールドスタートとパフォーマンス最適化

Lambda関数には「コールドスタート」という概念があります。これは、関数がしばらく使われずに休止状態になった後、最初に呼び出されたときに環境の初期化(コードのロード、ランタイムの起動など)に時間がかかる現象です。 ユーザー体験に影響を与える可能性があるため、パフォーマンス最適化の重要な考慮事項となります。

  • コールドスタートが発生しやすいケース:
    • 関数が長時間呼び出されない場合
    • 新しいバージョンの関数がデプロイされた場合
    • 同時実行数が急増した場合
    • メモリ割り当てが大きい場合や、初期化処理が多いランタイム(例: Java)
  • パフォーマンス最適化のヒント:
    • メモリの最適化: メモリを増やすとCPUリソースも比例して増えるため、処理速度が向上し、コールドスタート時間も短縮される場合があります。
    • 軽量なランタイムの選択: PythonやNode.jsなどはJavaや.NETに比べてコールドスタートが短い傾向があります。
    • VPC接続の最適化: Lambda関数がVPC内に配置されている場合、ネットワークインターフェースの割り当てに時間がかかり、コールドスタートを長くすることがあります。VPCのプライベートIP範囲を適切に設定することで改善が見込めます。
    • Provisioned Concurrency (プロビジョニングされた同時実行): 特定の数の関数インスタンスを常にウォーム状態に保つことで、コールドスタートを回避できます。ただし、これには追加料金が発生します。
    • SnapStart (Java向け): Java関数のコールドスタートを大幅に削減するための機能です。

CPUアーキテクチャ (x86 vs Arm)

AWS Lambdaは、x86(Intel/AMD)とArm(AWS Graviton2)の2種類のプロセッサアーキテクチャをサポートしています。 この選択は、パフォーマンスとコストに大きく影響します。

項目 x86 (Intel/AMD) Arm (AWS Graviton2)
一般的な互換性 最も広く利用され、既存のソフトウェア資産との互換性が高い。 新しいアーキテクチャだが、多くの主要なソフトウェアやライブラリが対応済み。
パフォーマンス 標準的なパフォーマンス。 同等のコストで**最大19%高いパフォーマンス**を提供(AWS公式)。特定のワークロードで顕著な改善が見られる。
コスト効率 標準的な料金。 x86と比較して**最大20%安価**(AWS公式)。
推奨用途 既存のx86ベースのコード、特定のレガシーな依存関係がある場合。 新規開発、コストとパフォーマンス最適化を重視する場合、対応する既存コード。
推奨: 新しくLambda関数を開発する際や、既存の関数を最適化する際には、**Arm(Graviton2)アーキテクチャの利用を強く推奨します**。 大幅なコスト削減とパフォーマンス向上が期待できます。ただし、利用するライブラリや依存関係のArm互換性を事前に確認してください。

当サイトの料金計算ツールは現在、**x86アーキテクチャの料金**に基づいて計算を行っています。将来的にはArmアーキテクチャの選択肢も追加する予定です。

開発・運用におけるその他の考慮事項

  • メモリ割り当てとCPU:
    Lambdaではメモリの量に応じてCPUリソースも比例して割り当てられます。メモリを増やすことで処理が高速化し、結果として実行時間が短縮され、合計コストが下がる場合があります。最適なメモリサイズは、実際にテストを実行して見つけることが重要です。
  • データ転送量:
    Lambdaからのデータ転送にも料金が発生します。S3やDynamoDBなどAWS内のサービスへの転送は無料の場合が多いですが、インターネットへの転送は課金対象です。CloudFrontなどのCDNサービスを間に挟むことで、データ転送コストを大幅に削減できる場合があります。
  • ログとモニタリング:
    CloudWatch Logsへのログ出力や、Lambda Insightsなどのモニタリングツールは、別途料金が発生します。これらのサービスもコストに影響を与えるため、適切に管理する必要があります。
  • 同時実行数の管理:
    予期せぬ料金増加を防ぐため、Lambda関数の同時実行数を制限する設定(Reserved ConcurrencyやAccount Concurrency)を活用することが推奨されます。

参考サイト

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